第67回日本化学療法学会総会

会長挨拶

東京慈恵会医科大学葛飾医療センター泌尿器科教授
公益社団法人日本化学療法学会理事長

清田 浩

この度、第67回日本化学療法学会総会の会長を拝命いたしました。この伝統ある学会の総会をお引き受けし、身の引き締まる思いでございます。また、会員の皆様にご心配をおかけしておりました一般演題は228題いただくことができましたことを感謝申し上げます。

米国CDC、そしてWHOが薬剤耐性菌の脅威について報告して以来、2016年のG20の伊勢志摩サミットにおける薬剤耐性菌(AMR)アクションプラン、抗菌薬適正使用支援の推進といった薬剤耐性菌を取り巻く状況は劇的に変化しつつあります。日本化学療法学会はこの劇的変化の中心に位置し、今後の感染症治療を牽引していかなければなりません。一方、抗菌薬適正使用や薬価改定を背景とし、新規抗菌薬の開発は衰えざるを得なくなり、進化、多様化しつつある薬剤耐性菌に太刀打ちできる新規抗菌薬の開発を待ち望むばかりという状況です。

感染症の治療の原則は、原因菌の同定とその薬剤感受性を明らかにすることです。これによって初めて最適な抗菌薬が選択されますが、その結果を得るまでには数日間かかるため、その間まずempiric therapyがおこなわれます。これはサーベイランスなどのデータに基づく経験的なものであり、ときには不適切なあるいは無効な抗菌薬が投与されることがあります。もし、原因菌の同定と薬剤感受性試験が迅速におこなうことが可能となればempiric therapyの期間は短縮され、速やかにdefinitive therapyが可能となります。このことは取りも直さず抗菌薬の適正使用に直結するはずです。迅速診断は従来のグラム染色から始まり、現在ではMALDI-TOF MSに代表されるような画期的な方法が普及し、さらに薬剤耐性遺伝子なども様々な方法によって迅速診断が可能な世の中になりつつあります。これらによって、最初からカルバペネムではなく、従来ある古い抗菌薬も最初から選択が可能になるのではないかと期待されます。

このような願いをこめて本総会のテーマは「近未来の迅速診断~empiric therapyからdefinitive therapyへ」といたしました。近未来の迅速診断がどのようなものか、いつ実現可能かを様々な専門家により皆様とともに考えていきたいと思います。将来の感染症診療の方向性を決める一助になれば幸いです。

日本化学療法学会は医師や基礎医学者のみならず、薬剤師あるいは臨床検査技師の会員が増加してきております。本学会ではこのような学会員の多様化に応えるべくプログラム委員長をお願いしました松本哲哉先生はじめプログラム委員会の皆様のご努力により、どなたでも楽しめる横断的企画を多くご用意することができたと自負しております。また、特別講演には自由民主党の厚生労働部会長をお務めの小泉進次郎衆議院議員による「社会保障改革 新時代~人生100年時代を支える社会保障とは~」というわが国の近未来を考えるにふさわしいテーマでのご講演を予定しております。実りのある学会になりますよう多くの学会員の皆様のご参加をお願い申し上げます。

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